逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
目を吊り上げて怒っていたが、その後兄が追っ払い帰っていった。



「お兄ちゃん、今回はごめんなさい。
もうこれで終わったと思う。

結婚はしばらくいいや。
寂しくなったら、お見合いでお父様お母様が選んだ人と結婚する。」


「芽衣…。結婚しなくてもずっと家にいたらいい。
お兄ちゃんだってまだ独身だ。
だれも急かしたりしないから。」

「うん。ありがとう。」



その後自宅にしばらくこもっていたが、一人になりたくて家を抜け出した。
電車に乗って遠くに行こう。
あてもなく出てきてしまったが、誰も自分を知らないところへ逃げ出したかった。
会社にも、家族にも迷惑かけて…。
信じていたのにもう無理で…。
考えることも嫌で…。
心が疲弊していた。

ボーっと駅構内を彷徨いどれでもいい遠くに行ければ。
階段を歩いていたら、誰かにぶつかり。
そのまま体が宙に浮いた。

激痛と生暖かい感触が頭を伝った。
その先の事は覚えていない。



すぐに緊急搬送されたらしい。
駅で怪我をして頭を打っていると、腕の骨折と、一部ひびも入っていると、そう説明を受けた。

そして、私は都合の悪い部分だけを都合よく、記憶を無くした。
どうやら心も折れたようで、今回の件は十分な理由だった。
心に蓋をして生きたかったようだ。


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