懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
社長に〝欲しいものは〟と訊かれた瞬間から何度も頭の隅でチラついてはいるものの、さすがにこれは言えないと思った。こういうことじゃない。社長に求められている〝私の欲しいもの〟は、絶対にこういうレベルの話じゃない。
大丈夫だとは思うけど、まかり間違っても口走らないようにしなくちゃ。
「その顔は、あるな」
「へっ……!?」
気づけば社長が、見透かすような目で私の瞳を覗き込んでいた。
(また心を読まれた……!)
共にする時間が長いから仕方ないとはいえ、お互いのことがわかりすぎるのも考えものだ。隠し事ひとつできやしない。
間近に迫る麗しい顔に私はひたすら焦った。
(ええと、ええと……!)
あまりに間が長いと〝一番欲しいものではない〟とバレてしまう。
でも嘘をつくのは嫌だ。
本当に欲しいものは社長に言えるようなものじゃない。
でも嘘は無理ッ……!
(ええぇ――!?)
じゃあどうしたらいいの!?
自分の事情と信条の間で板挟みになってパニック。
社長の顔が近すぎて焦点が合わなくなりさらにパニック。
頭が真っ白になりながら、何か言わなきゃ!という気持ちが前に出た結果、私は口走っていた。
「こっ……子ども! 子どもが欲しいです!!」
――そう。私が欲しいのは〝子ども〟だった。血を分けた自分の子ども。