私に攫われてください
クラウスは微笑み、指をパチンと鳴らす。その刹那、花吹雪がまるで壁のようにクラウスと父の間に流れ込んだ。

「クソッ!!」

父は何度も発砲したが、クラウスの声は聞こえてこない。花吹雪が止んだ時、そこには誰もいなかった。



先ほどまであれほど騒がしかった屋敷が、今は静まり返っている。

クラウスが来てくれたのだとエリーゼはすぐにわかった。そして、どうやって自分を攫ってくれるのだろうかと待ちきれなくなる。しかし、部屋から出ることはできず、もどかしい。

コンコンコン、とドアがノックされた。エリーゼの胸が高鳴る。

「お嬢様、いらっしゃいますか?」

その声にエリーゼは「はい!!」とすぐに返事をする。これほどわくわくするのは幼い頃以来だ。

ガチャリと音がし、ドアが開けられる。エリーゼの目の前にいたのは、白いスーツとシルクハットの怪盗クラウスだ。

「クラウス、待っていたわ。早く私を攫って」

エリーゼはクラウスに駆け寄り、上目遣いでクラウスを見つめる。クラウスは優しく微笑み、エリーゼの頰に触れた。
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