なけなしのプライドを笑え
アパートの家に帰ると鍵は空いていた。玄関には母親の靴と、知らない男の靴。もうこの時点で俺の嫌な予感はほとんど当たっていた。小梅に家の外で待つように言って、俺はそっと中に入る。あぁ、ビンゴ。リビングのソファで、真っ裸の母親が男とよろしくやっていた。俺がその横を通っても行為に夢中でなんの反応もない。まあ、そっちの方がこちらとしても都合がいいんだけど。

小梅と俺のふたり分の荷物を持って、俺は家を逃げるようにして後にした。アパートの前で言い付けどうりに待っていた小梅は俺を心配そうにじっと見つめる。
「大丈夫、今日は奥田さん家に泊まろう」
「うん」

素直に頷いた小梅の手を取って、アパートの階段を降りる。

クソみたいな母親の元に生まれちまった俺たちだけど、せめて小梅だけでも、嫌なもの、怖いものは極力見せたくない。守ってやりたい。
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