君がいればそれだけで。
ジーニアとか言う娘が嘘を吐いているというのか。何のために。でも、女中専用の糸が使われている事を考えるとジーニアが細工したと考える方が自然か。ただの町娘にあの知識があるとは考えにくい。

「あの日の会話を話せば満足か?」

「あなたの涙の理由が聞けるなら」

「・・・見ていたのか」

ずっと黙っていたパルさんが寄りかかっていた体を起こして問い掛けてきた。別に犯人を突き止めて火炙りにしようだとか、仲間割れさせようだとか思っている訳じゃない。
パルさんは俺が皆を疑う理由を分かっているのだろう。だから本当に聞きたい事を当てられたのだろう。さすがに明け方の事までは気付いていなかったか。
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