君がいればそれだけで。
どうしたら泣き止むのか考え付かなかったのか、ベクウは僕を抱き締めてきた。背中を叩く訳でもなく、擦る訳でもない。強く抱き締めたり、距離を置いて泣き止んだか確認したりとしている。

「ごめん・・・っ、ごめんねっ」

「大丈夫っ!なっ!」

「・・・どうしたんだ?」

僕はやっと涙を止める事が出来た。まだ睫毛に付いた涙がたまに流れはするけれど、笑顔を見せる事が出来たからベクウも安心してくれたんだと思う。抱き締めていた体をやっと離してくれたんだ。
結局、泣いた理由は話せなかったけどジーニアはいなくなったみたい。ベクウに頭を撫でられながら笑い合っている僕に兄さんは不思議そうな表情をしていた。
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