君がいればそれだけで。
六章・命があっても

おかしいんじゃないのか

ここは一体どこなんだ。昼間なのに暗い闇に包まれたと思ったら体内のような生々しい所にいた。辺りを見渡しても特に誰かいる訳じゃない。私が勝手に意識を失っただけかとも思ったけれど、それならどうして夢を見ているんだと不思議になり歩き回ってみる事にした。
まるで舌の上を歩いているみたいで気持ち悪いな。でも、体幹が鍛えられそうだ。柔らかい所に慣れて逆に普通の道を歩けなくなっても困るけどな。
暫く歩き、座れそうな場所がないか探し始めた時だった。囚人が来ていた白い服が落ちていたんだ。王女は囚人に白い服を渡し、好きに模様を描かせていたからよく覚えている。これは確か、子供の愛し方が分からなくて怯えていた女の物だ。腹の部分だけが荒々しく、でも遠慮がちに塗られていたから。
女の服を持ち上げると子供が着るような小さな服がはらりと落ちた。上からは何も見えていなかったし、抱き締めていたのだろうか。
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