私だけのヒーロー



私の気持ちも落ち着いた頃、たっくんのスマホの通知音が鳴った。



たっくんはスマホを見たあと、「ちょっと電話してもいい?」と私に確認し、誰かに電話をしはじめた。



『そのチケットって、あと2枚余ってる?』



チケット? 友達とどこかに行くのかなぁ。

たっくんと出かけられたらどこでも楽しいんだろうなぁ。



たっくんの電話が終わるまで、たっくんとならどこに行きたいかなぁなんて、勝手に想像していた。



「待たせてごめん」

「大丈夫だよ!」



電話が終わったたっくんは、スマホをギュッと握りしめたあと、私を真っ直ぐと見つめてきた。



それにドキッとする私。



「あのさ、今週の土曜日空いてる?」

「え? 空いてる……けど、何で?」

「友達が水族館の無料チケットを貰ったらしいんだけど、余ってるみたいで……」

「……うん」

「よかったら、さゆの友達も誘って一緒に行かない?」



え?! これって、お出かけのお誘い?!



「もちろん! 友達にも聞いてみる!」

「よかった。じゃあ、詳しくはまた決めよう」

「うん!」



今日生まれて初めて男の子と一緒に帰って、土曜日にはみんなでだけど水族館に行くことになった。



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