君 色。 <短>
灰色。
「それじゃ、また」
「うん。バイバイ」
……渇いたキス――
毎回、すっかりお決まりのようになってしまった、別れ際に交わす“恋人”としての確認。
いとも簡単に人混みの中に消えていく、彼氏の背中を見つめながら、私はぼんやり呟いた。
もう、ずっと前からだ。
私にとってこの行為は、何の意味もなさなくなっている。
ただの機械的な恋人の義務。
そんな、呆れた感覚。
……いつからだろう。
何も感じなくなったのは。
遠い記憶を辿ってみる。
初めてのキスはドキドキしすぎたせいで、目を開いたままで……
終えた後の瞬間の空気に、なんともいえない気恥ずかしさで、いつもより紅潮した互いの顔を見ながら笑い合った。
“ファーストキスはレモンの味”
そのわけが、私にもやっとわかった気がした、あの日――
感じたのは、口なんかじゃない。
味わったのは……私の心。
だって……
甘酸っぱさを感じて、キュンと少しだけ苦しい痛みが、胸の中に駆け巡ったから。
二回目のキスは、ちゃんと瞼を降ろすことに成功して……
だけどやっぱり、ドキドキは止まらなくて。
その中に、ほんわかした気持ちが、ジワジワって広がって……
多分私は、真っ赤な顔で、穏やかに笑っていた。
今度はレモンよりもちょっとだけ甘い、イチゴ味……だったかな?