君 色。 <短>
今は……
うまくなった。
自然に瞳を閉じることができる。
首だって上手に傾けられる。
相手の腰に手を回す余裕だってできた。
……なのに
何かを失った。
失くしてしまったのもは、多分本当はわかっている。
だけど今の私は、取りに帰ることもできなければ、新しい何かを探す気にもなれないでいる。
過去にこだわらず、いつも先ばかりを見ている私に、いつか強いと言った人がいた。
……だけど、私は思うんだ。
結局、立ち止まらないで走り続ける人って、強いんじゃなくて、弱いから立ち止まれないんだと――
振り返ることが恐いんだ。
気付いてしまうことがツライんだ。
落としてきたモノの多さに……
そして過去の私が、今の私をゆっくりと責める。
捨ててきた何かと引き換えにある今は、それほど価値のあるものだったのかと。
……あぁ、痛い。
心じゃなくて、むくんだ足に痛みの意識が向く自分に、笑ってしまう。