名前を呼んで、好きって言って
私、そんなふうに思われていたんだ……
今まで聞こえていなのは、陰口のほんの一部だったんだ……
「何、してるの……?」
そこには美桜がいた。
「瑠衣、喧嘩なんて……秋保、泣いてるの……?」
美桜は混乱しているようだった。
「……自分の妹の身に何が起きてるのか、知らないの?」
瑠衣は美桜を責めるように言った。
美桜は何も悪くない。
だから、そんなふうに言わないで。
そう思ったのに、美桜を前にして、私は何も言えなくなっていた。
「秋保に……?」
美桜はあの噂を知らないようだった。
知らないなら、知らないままでいい。
でも、このままだと、瑠衣は勢いで美桜に言ってしまうかもしれない。
「……瑠衣、お願い……もう、やめて……」
瑠衣が味方でいてくれることは、すごく嬉しかった。
でも、そのせいで美桜が追い詰められるのは違うと思った。
「でも、このままじゃ」
「……だとしても、やめて。ね?」
瑠衣はやめてくれたけど、納得はしていないみたいだった。
「秋保、一体何があったの?」
これだけ隠しごとをされると気にならないほうが無理な話。
だから、美桜にそう言われるのも不思議ではなかった。