名前を呼んで、好きって言って
「秋保?」
どうしても聞きたいのか、美桜は私の名前を呼ぶ。
言えない。
言いたくない。
「秋保!」
そして私がとった手段は、逃亡だった。
◆
逃げ出した秋保を追いかけようとすると、瑠衣に邪魔をされた。
「瑠衣、どうして止めるの」
前に立つ瑠衣を睨む。
秋保、泣いてた。
理由はわからないけど、傷付いているのはたしかだ。
姉として、行かなければ。
そう思ったのに。
「……美桜が行っても、余計秋保を傷付けるだけだから」
秋保に何があったのか知っているような口ぶりだった。
「……瑠衣。ちゃんと話して。秋保に何があったの?」
そう言っても、瑠衣は目を逸らすだけで教えてくれない。
瑠衣が言わないなら、他の人に聞けばいい。
「ねえ、何があったの?」
瑠衣が喧嘩をふっかけていた子に聞く。
だけど、その子も目を逸らした。
「……秋保ちゃんが……美桜ちゃんの彼氏を……」
そこまで言って、その子は言葉を濁した。
すると、瑠衣がため息をついた。
もう逃げられないと観念したようだ。
「秋保も好きだったんだと。新崎流星のこと」
「え……」
言葉が出なかった。