もうそばにいるのはやめました。
……こう考えると、なにからなにまで両親や使用人に任せきりだったんだなぁ。
自分で身だしなみを整えることもこんなに難しかったんだって、ここで生活して初めて学べた。
そう気づけただけでも成長してる……よね?
「わたしね、円と一緒に暮らせて楽しかったよ」
「俺はすんげー苦労した」
「あはは……円は物知りだからつい頼っちゃうんだよね」
「お前が世間知らずすぎるんだ」
反論できない……。
そ、それもあるだろうけど!
円の存在がわたしの中で日に日に大きくなっていったんだよ。
ねぇ、おぼえてる?
あの梅雨入りした夜のこと。
リビングでアイロンの仕方を教えてもらっていたら
――ゴロゴロ……ピッシャーン!
いきなり雷が落ちて停電したよね。
『え……え!?また電気使いすぎちゃった!?』
『……ちげぇ』
『ちがうの!?じゃあなんで!?』
アイロンを手に取る前でよかった。
安心する気持ち、半分。
真っ暗になってやばい!
パニック、半分。
『ね、ねぇ、円くん!こういうときは……』
――ピッシャーン!!
二度目の雷鳴。
カーテン越しに散った閃光で一瞬見えた。
見えてしまった。
円のおびえる姿が。
体を小さく丸めて震えていた。
幼い子どものようだった。
『ま、どか、くん……?』
『なんだよ』
なんてことないように繕われた低音は、想像していた以上にか細かった。