この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

ひまはいない。

もう二度と会うことはできない。いなくなるって、そういうことだ。

なんで俺はひまの死に向き合えなかったんだろう。ツラさや恐怖をわかってやれたら、もっとなにかできたかもしれない。

そしたらもっと穏やかに天国に逝けたかもしれない。本音やツラさを隠して笑うのは、どれだけツラかったか。

なぁ、ひま。

俺、おまえになにもしてやれなかった。

ごめん、ごめんな。俺が弱いばっかりに、病気のひまに気を遣わせて。

それでも俺はそばにいたかった。その考えはまちがっていたのかもしれない。

好きって気持ちを押しつけて、ひまを傷つけていたかもしれないなんて耐えられない。

でも、好きだったんだ。

誰よりもひまが大切だった。

できるなら、ずっとそばにいたかった。

こんな俺を、許してくれる?

「ひま……っ」

嗚咽がもれて、必死に唇を噛んだ。これからひまなしでどうやって生きていけっていうんだよ。

会いたい……おまえに。

今でもこんなに好きなんだ。

──ヒューッ

そのとき、ひときわ強い風が吹いた。

サーッと心地いい春風が髪を揺らして、涙をからめ取っていく。

穏やかで優しい、そんな春風。ふいに顔を上げると青空が目に入った。涙でボヤける視界に真っ青な空がまぶしい。

木々の葉がざわざわと音を立てて、心を穏やかにしてくれる。

ひま──

そこにいんのか?

泣くなって言ってる?

は、そんなわけないよな。

──ヒューッ

けれどもう一度風が吹いて、俺はとっさに空を見上げた。

それはあの日、ふたりで見上げた空によく似ていた。

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