スーパーヒーロー
「進路。決めた?」
「大学には行く。」
「ふーん。」
「君は?」
「東大行って天才として生きる?キラン」
「……」
「あ、今馬鹿だなって思ったでしょ?!もー」
「ま、頑張ればいいんじゃね?」
「……昔さ。」
「ん?」
「あなたはスーパーヒーローになりたいって言ってた。」
「ん、あぁ。小さい頃なら誰だって夢見るだろ?」
「そっか。」
「君は神様になりたいって言ってた。」
「そうだね。あの頃は皆を幸せにできるって思ってたから。」
「今は?」
君は少し黙る。そして少し寂しそうな顔をしながら言った。
「無理だって思ってるよ?いつも貴方が夢夢言うから。」
「僕のせいか。」
「うん。」
沈黙が流れる。いつも思う。沈黙をここまで何も感じさせないのは君の凄さじゃないんじゃないかと。君は居るだけで周りが幸せになるんじゃないかと。昔からいつも思ってた。明るい君しか知らなかった。だから。今、君の言葉を聞いて驚いてる僕に君は気付いてるんだろうか。
「私はね。別に皆を笑顔にしたいんじゃないんだよ?」
「え……?」
「あなたはいつも寂しそうで暗い顔をして、自分を悲観して責めてる。そんな貴方を幸せにしたかった。」
さっきの驚きなんか比じゃない程驚いてる。そんな話。僕は知らない。
「貴方は自分を大嫌いみたいだけど。私はあなたにいつも救われて。笑顔になれた。貴方の単調な言葉が大好きだった。」
「………」
「それでもあなたはいつも周りから責められてた。夢を見ないあなたを皆が皆変な目で見てた。」
「それは。」
「貴方は。貴方だから。誰でもない貴方だから。誰にも変えられない存在だから。」
僕が見たことの無い寂しそうな君の。それでも眩しいくらいの君の笑顔。そんな君から僕は目が離せない。
「ずっとずっと笑ってて!もし、今みたいに笑うのが苦しいなら!私が笑顔にさせてあげる!」
今、気付いた。僕が君をどう思ってたか。自分の気持ちに気付いた。
君は立ち上がって帰ろうとする。
「あのね!前言ってた夢の話!貴方のお嫁さんの話!」
「?」
「結構本気で夢見てるから!」
「え、」
「夢ってね?今は夢だけど叶うことが出来たら本物の幸せになるんだよ?覚めるも何もそれが現実になるんだから!」
僕に背を向けてた君がこっちを振り向いて言う。
「私は!夢を諦めない!絶対に!ね?」
そう言って君は帰っていく。
驚きでしかない。僕の憧れでしかなかった君が。僕に。
見た事の無い顔。とても綺麗だった。
君は僕を笑顔にするって言った。もしかしたら僕も。誰も見た事の無い君の顔を見れることが出来るんだろうか。
今更。夢を馬鹿にしてた僕が。夢を見てもいいんだろうか。
そんなことを思いながら気付いた。夢は勝手に出来てしまうものなんだ。諦めようとしても。諦められない。
途中で覚めてしまうだろうか。夢は幸せになろうとした時に覚めるから。でも。今更無視すること出来ないこの夢を。叶えたい。
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