KANATA~answers of your selection~
買ったミルクティーとサイダーを抱えて廊下を歩いていると、聞き覚えのある声が耳に届いた。



「先生それどういうことですか?!」


「だから、あれ以降の成績があまりにも奮わないからシードは無くなったの。もう実力で勝ち進んでいくしかないのよ」


「そんな...」


「大和田さんがキャプテンなら大丈夫よ。一緒に頑張りましょう」


「分かりました...。皆には私の口から伝えます。なんとか頑張ってみます」



とんでもない場面に遭遇してしまったらしい。


オレは引き返すことも出来ず、向かっていくしかなかった。


最悪だ。


今日は本当にツイてない。


どんな顔をして挨拶すればいいんだよ。


サイダーで蒸発したはずの疑問がまた帰化してしまった。


悩む間もなく未夢がオレに近付いて来る。


オレは立ち止まった。



「あっ、奏太」


「よっ。未夢はこれから練習?」


「あっ、うん、まあ」



歯切れが悪いということは相当落ち込んでいる。


オレが出来ることならしてやりたい。


意味不明な正義感が生まれ、オレを突き動かした。



「大丈夫?なんか辛そうだけど」



オレのその一言で未夢は糸がプツリと切れたように膝から崩れた。


オレもしゃがみこんで未夢の顔を覗く。



「未夢?」


「奏太...未夢、どうすればいい?これ以上何を頑張ればいいの?」



未夢が辛い顔をすると、オレは決まって未夢の右手を握る。


そうすれば未夢は安心して落ち着きを取り戻してくれると確信しているからだ。



「奏太...ありがとう」



未夢には笑っていてほしい。


昔から人一倍元気で明るい未夢に泣き顔なんて似合わない。



「オレで良ければ話聞くよ」


「あのね、実は...」




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