化学式で求められないもの
「織里奈の泣きそうな顔、可愛いよね。もっと見たくなるな〜」

教室から出て行く間際、先生が私に小声で呟き、私は首を横に振る。アンタに泣かされるとか、何の拷問だよ!!

「じゃあ次は木曜日に会おうね」

先生は爽やかな笑顔を向け、教室を出て行く。いつもやられてばかりが悔しくて、私は先生の背中に向かって舌を出した。



先生には、高校一年生の時から理科を教えてもらっている。でもその初っ端から私はいじめられてるんだよね。

どうしてかわからないけど、私が嫌がることを知っているみたい。例えば……。

「じゃあ、乙女座の神話を話して」

「マッチに火をつけて」

「じゃあこの計算をしてみよう」

先生は私の反応を絶対楽しんでる。でも、そんな顔を見て少し……あんなことを思う私も私だけど。

モワッとする気持ちを紛らわそうと、私はスマホを開ける。その時、あるネットニュースに目を輝かせた。

「流星群……!そっか、今日だったね」
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