冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】


「しかし……私は目立つ方ではございませんでした。と言いますか、会場にはあまり居なかったはずです。それなのに何故私を………」


「だから初めに言ったであろう…一目惚れと。会場で一目見た瞬間、あれほど詰まらなく感じていたパーティーが急に色づいていく様な不思議な感覚は初めてだった…」


(……王様は本当に…)


「捜しに行った理由は、もう分かるであろう…?その様な妃が連れ去られたとあれば、捜しに行くのは当然の事だ」


初めて知った王様の想い。


正直その言葉が知れて、とても嬉しい気持ちにはなった。


けれど、私の心をそう簡単に変える事は出来ないと、私は分かっていた。


私のその心は、今誰に向いているか。


誰を思っているのか。


自分でそれすらも分からない人間が、この場で易々と王様のお気持ちにお答えするなんて許されるはずもない。


それを察してか、今日の王様はいつになくお優しく感じた。


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