冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「………やはり、憶えているのは俺だけ……か」
独り言の様にポツリと呟かれたその声はとても悲しげで。
私を見つめる瞳はどこか憂いに満ちていた。
「…如何なさいましたでしょうか?」
先程の言葉は私にしか聞こえていないみたいで、宰相様はご様子の可笑しい王様へ声をかける。
「………一つ用を思い出した」
ゆっくりと口を開くその王様は、始めに見たあの姿に戻っていた。
「何で…ございましょう?」
宰相様は恐る恐る聞き返す。
「そなたらにとっても、決して悪い話ではない」
王様はそう口にされると、意味ありげに含み笑いをした。