王子系幼なじみと、溺愛婚約しました。



声を聞いただけでわかる。

一瞬、今わたしの周りだけの音が何も聞こえなくなるくらい……


ただ、心臓の音だけは異常なくらいバクバクと響いてくる。


ずっと、ずっと……


会いたくて仕方なかった人……。


自分を落ち着かせるために、ゆっくり胸元にあるネックレスをギュッと握る。


すると、背後に突然人の気配を感じて。


「芙結……?」


甘い香りが鼻をくすぐって。

ふわっと優しく、後ろから抱きしめられた。


まだ顔も見ていないのに、うるさい心臓の音は収まることを知らない。


「僕のこと……覚えてる?」


耳元で聞こえる、甘くて少し低い声。

声からしてわかる。
前と比べて格段に大人っぽさが増していることが。


ドキドキしながら、震える声を抑えながら。


「は、芭瑠……くん……っ?」

< 24 / 361 >

この作品をシェア

pagetop