心理学者と夢占い
心理学者と死にたがりな彼



小夢は、次の人を呼ぶ。相談室に入って来たのは、辛そうな表情を浮かべた高校生ぐらいの男の子だった。

小夢と目を合わせた瞬間、彼――祐介(ゆうすけ)は「こんにちは」と呟く。

無表情の目には、辛そうな表情が隠れていることを見抜いた小夢は「……こんにちは。とりあえず、おかけください」と祐介にソファーに座るように促す。

「……僕は、昨日自分が倒れる夢を見ました。調べてみると、疲れが溜まっていて限界に近い、と書かれていて……最近、色々と悩んでいましたから……」

自分が倒れる夢は、心か体が限界に近いときに見る夢だと言われている。

「……どうすれば良いんでしょう。僕は、行き場を失ってしまった……あ、そうそう。声が出せなくなる夢ってどんな意味なんですか?」

「声が出せなくなる夢は、自分の思いが相手に伝わっていない、または伝えられないということを示しています」

「そうなんですか……先生、前、友達に感情が無いって言われました。幼い頃に、いじめを受けていたせいで、感情を失ってしまったのに……どうやって、感情を出せばいいんですか」

「僕は、小学2年生に上がって、すぐにいじめを受けました。その時は、感情は豊かだったのを覚えています。ですが、学年が上がるにつれて、僕は感情を出せなくなっていました。出したいって思っても出せないんです……」
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