極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい

流星side

叶達が出ていってからレジデンスに戻った俺は、違和感を感じていた。
あんな騒がしかったのが嘘のように静まり返ったリビング。片付けられたキッチン。
叶の部屋を見て、まるで最初から叶など居なかったようにガランとしていて、ズンと胸が重くなるのを感じた。叶がいないだけでこんなに寒々しい家だっただろうかこの家は…。
唯一の痕跡は二人で暮らすようになってから揃えた食器と冷蔵庫の食材、そして晩酌セット。叶が用意して行ったのだろう。2年の間に俺の好みを把握しいつでも酒を飲めるように用意をしてくれていた。

叶は甲斐甲斐しく俺の世話を焼きよく気の利く子だった。俺の言うことを素直に聞き反抗することもなかった。
おそらく今回のことは、父と新山が余計な事を言ったのだろう。結婚などしないと言ってるのに、自分が結婚の邪魔になると、素直な叶はそれを鵜呑みにして俺の元を去った。俺の事を一番に考えるやつだ、それくらいする。それがわかっていても俺は許せなかった。
父の元に叶が行って清々した、そう思い込もうとして父にも叶の様子は聞いていない。

しかし一人になって、食事をしても、いつものように音楽をかけ酒を飲んでも、静かな時間が戻って来たというのに居心地が悪く、ゆっくりと一人の時間を持てなかった。
お陰で会社に遅くまで残る事が多くなり、家には寄り付かなくなっていた。

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