極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
焦燥感に駆られながらエレベーターに乗ると斗真さんが追いかけてきた。
「そんなに慌てなくても流星は大丈夫だよ。あいつは殺しても死なないやつだから」
「…でも、人は病に勝てない時もあるんです。お兄ちゃんだってそうだった…」

兄の望はいつも元気で明るくて風邪の一つも引かない人だった。それが、最近疲れが取れないなんて言ってるうちに職場で倒れそのまま入院。既に手術も出来ないほど病気が進行していた。
「元気だったはずの兄が病気で倒れてあっという間に死んでしまいました。流星さんまで失ったら…私…」
「叶ちゃん…」
流星さんと兄を重ねて、また自分の大事な人が目の前から居なくなってしまうと思うと不安で胸が押し潰されそうだ。
エレベーターのドアが開いた時には斗真さんの存在も忘れて飛び出して行った。
歩きやすいミュールも走るのには向かない。何度も足がもつれコケそうになりながら一心不乱にレジデンスを目指した。
もうすぐレジデンスに辿り着くというときになってとうとうビタンっと派手に転んでしまった。
「いったあ〜…」
手も膝も痛い。痛みと不安で涙が溢れる。
ミュールもどこかに転がったらしいけど構うことなく私はまた駆けて行く。
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