極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
「そうだな、叶は家族がいないのだろう?うちは必ず誰かいるし賑やかな方が寂しくない。叶は気が利くしいい子だ。紀子も助かるだろう。うちで引取るぞ」
「そんなこと…」
許可できないと言う前に叶が出て来て話は途切れてしまった。清楚なライトブルーのワンピースは叶に似合っていて眩しかった。
二人に褒めそやされて満更でもない顔をする叶に胸が傷む。
みんなといて楽しいと笑う叶にそれ以上何も言えなくて書斎に引きこもってしまったが…。

跡取りとして、いずれは結婚して後継者となる子供を儲けなくてはいけない。それは理解している。しかし、叶をこのまま自分の側に置いとく事は叶わないのだろうか?そんなこと、今まで考えた事が無かった。漠然と結婚しても叶だけは側にずっといると思っていた。それは叶にとったら辛いことなのか?だったら実家にやった方がいいのだろうか?
叶が笑ってられるならそれもいいのかもしれない。だが、俺といる叶は笑えてないのか?そう考えて、いや、そんなことないと思い直す。
屈託ない笑顔、はにかむ笑顔、ふわりとした微笑…叶の笑顔が次々と頭の中に浮かぶ。
…………
考えがまとまらず、ふと、机に置かれたおかきが目に入った。
一つ取って口に放り込む。
「…しょっぱい…」
当たり前のことを口にして俺は天を仰いだ。
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