あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
私は奥の手を出す。
赤ちゃんの話題を出すと心平は弱い。
「じゃあすぐ上がるから。」
そう言って心平はかなり慌てて浴室へ向かって行った。
その間に陣痛が来たら測れるようにと自分の携帯を置いていった心平。私は預かった携帯電話を机に置くと立ち上がり用意しておいたお守りを持ちに寝室へ向かった。

そのお守りは心平が作ってくれた。
なんでも器用にこなす心平は裁縫は苦手らしくかなり大きな縫い目になっているのがまた味があってうれしい。私の好きなデザインの生地をお守りの形に縫ってあるお守りの中には心平からの手紙が入っている。これは無事に出産を終えたら読んでいいといわれている。
私がお守りを入れていた小物入れにはもう一つ思い出の物が入っている。

『桐谷心平』と『須藤知佳』というネーム。
これは営業Ⅱ課でボードに貼っていたものだ。
私のネームも今は『桐谷知佳』になっていて以前使用していたものを持ってきた。

大切な思い出がこのネームには詰まっている。
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