君がいれば、楽園
 まず、冷凍チャーハンをレンジで温めた。

 食べ終えて、今度は冷凍お好み焼きを温めた。

 さらに、焼きおにぎりも。

 どれも美味しい。冷凍食品のクオリティの高さには、感謝しかない。

 テレビのチャンネルをぐるぐると五分おきに変えながら、いつも以上に時間をかけて、だらだらと食べた。
 ズキズキする足の痛みが和らぐんじゃないかと思って、途中から缶ビールも飲み始めた。

 それでも、ひとりの時間は、なかなか過ぎていかない。

 お笑い番組、ニュース、どこかの国の風景。移り変わるテレビの画面を眺めているのに飽いて巡らせた視線の先に、段ボールがあった。

 なぜ、そんな無謀なことをしようと思ったのか自分でもわからない。

 あまり料理が得意ではないという自覚があるので、普段はかなり気合を入れて台所に立つ。

 そうしないと、とても危険だからだ。

 フランベなるものに挑戦しようと思って危うく自分をフランベしかけたこともあれば、おしゃれなスムージーを作ろうとして、ミキサーで大爆発を起こしたこともある。オーブントースターに大きめのパンを無理やり詰め込んで焼き尽くし、火災報知機を発動させたこともある。

 いつも彼――冬麻が傍にいたので、大惨事にならずに済んでいた。

 そもそも、冬麻が食べてくれないときに料理をしようと思ったことがなかった。

 それなのに、彼がいないのにかぼちゃの煮つけを作ろうとしたから……悲劇が起きた。
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