【女の事件】黒煙のレクイエム
第29話
あきよしが使っていたパソコンがウイルスに感染したことが原因で個人情報が大量に流出をして、7人の受給者の年金がだましとられた事件で、あきよしの兄はあきよしが悪いことをしたと言う自覚がない上に、部屋に引きこもっていじけていたので、情けない男だと怒ってばかりいた。

兄嫁さんは『あきよしは引きこもりになってしまったので、助ける必要はない!!』とあきよしの兄から厳しく言われたので、助けることができなかった。

あきよしが個人情報を大量に流出させてしまった事件については、警視庁があきよしのパソコンに標的ウイルスを仕組んだメールの発信源を特定する作業に入っていたが、複数のサーバーを経由していて複雑になっていたので捜査は難航していた。

年金機構は、年金をだましとられた受給者への対策などに追われているためにあきよしが職場で起こしたもめ事の問題の解決は後回しになっていた。

部屋に引きこもりになったあきよしは、7月19日頃に再就職をしてもう一度やり直すから助けてくれと兄嫁に頼んだ。

兄嫁さんは、玉野市内の事業所を回ってあきよしの受け入れをお願いしに行った。

しかし、事業所はあきよしを受け入れることができないと言うたので、たった1日でシューカツを止めてしまった。

その一方で、あきよしの兄は勤務先の玉野市内の工場が近いうちに従業員さんを2000人減らす計画があると言う話を聞いたので、ものすごく不安になっていた。

あきよしの兄がリストラされる危機が差し迫っていることを察知した兄嫁は、アタシがバイトをしているローソンにやって来て助けを求めた。

アタシは、あきよしのことで相当怒っていたので助けることはできないわと兄嫁に言うた。

アタシは、ゴミ箱の整理をしながら兄嫁にこう言うた。

「あんたね!!アタシのことをボロメタに傷つけておいて、都合が悪くなったから急に帰ってきてほしいだなんてムシがよすぎるわよ!!アタシはね!!気にいらんことがあったらアタシに暴力をふるうあきよしはとっくに棄てた(すてた)のよ!!あんたはアタシにどうしてほしいと言いたいのかしら!!用がないのだったら帰んなさいよ!!」
「こずえさん…お願いです…あきよしさんが引きこもりになっている上に、てるよしさんが工場をクビになるかもしれないのです…アタシも、外へ働きに行きたいけど、働きに行けないので困っているのです。」
「だからどうしてほしいと言いたいのかしら!?」
「どうしてほしいって…1万円でもいいから…おカネを送金してください。」
「あんたアホとちゃうで!?離縁した家に送金するカネなんか1文もないから…それだけは言うておくから…あんたね、どうして外に働きに行きたくても働きに行けないのですといいわけばかりを言うのかしら!!それはどういう意味なのよ!?」
「どうしてって働きに行けないって…アタシは一度…」

兄嫁は、つづきの言葉が出なかったので、アタシはイラついた声で言うた。

「一度…その先はなんじゃあ言おうとしたのかしら!!あんたは、浮き世の世知辛さをゼンゼン知らへんみたいね!!あんたは一度も外に働きに出てへんけん、万が一が発生した時にパニックを起こしたのでしょ!!あんたはアタシが言うてはることがゼンゼン分かってへんみたいね!!」
「こずえさん、どうしてそんな冷たいことを言うのですか…」
「うるさいわねあんたは!!あのね!!アタシはね!!あんたたちの家のことで相当怒っているのよ!!あんたカタの家に送るカネなんか1文もないから…帰んなさいよ!!帰らないと知り合いに電話して組長呼ぶわよ!!」

アタシは、兄嫁にきつい声で怒鳴り付けた後にバイトを再開をした。

アタシは、あきよしの家への憎悪をさらに高めていたので、対立の溝はさらに深まっていた。
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