【女の事件】黒煙のレクイエム
第41話
7月3日のことであった。

たかよしの姉が解雇予告の書面を受けとる前にクラレの工場をやめたと言う知らせが、たかよしの家に伝わったので、家族はより強い不安に襲われていた。

たかよしはショッケンの工場をやめた。

たかよしの母も、母恵夢の工場の仕事がきついなどとブツクサ言ったあげくにやめた。

そのまた上に、まさよしの嫁さんがパート先の職場の待遇面が悪いなどの不満をゴタゴタと並べたあげくにやめたけん、収入が1円も入らなくなった。

田ノ窪の母方の実家は、今もカンドーされている状態になので、援助が見こめない上に、まさよしの嫁さんの家も、まさよしと嫁さんの結婚問題でゴタゴタしているので援助がもらえない状態になっていた。

困り果てたまさよしの嫁さんは、アタシがバイトをしているファミマにやって来て、アタシに送金をしてほしいとお願いをしていた。

アタシは、たかよしの家の人間はこらえへんと怒っているので『バイトのジャマをしに来たのだったらケーサツを呼ぶわよ!!』と怒った。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに入れ替える仕事をしながらまさよしの嫁さんにこう言うた。

「あんたなに考えとんで!!せっかく始めたパートを職場の待遇面に不満があると言うてやめたと聞いたけど、あんたは甘ったれているわよ!!アタシの言うてはることが全く分かってへんみたいね!!あんたね、営業妨害をするのであればケーサツ…ううん、アタシの知人の組長を呼ぶわよ!!」
「アタシは営業妨害をしようなんて思っていません…こずえさんに送金をお願いしに来ただけなのです。」
「はぐいたらしいわね!!どうしてアタシにばかりソーキンソーキンといいに来るのかしらねぇ!?ストーカー女!!」
「アタシはストーカーなんかしていません…こずえさんに助けてほしいから、お願いをしているだけなのです。」
「はぐいたらしいわね(あつかましいわね)あんたは!!あんたはどうしてアタシにばかりソーキンソーキンと言うてくるのよ!?生活が苦しいのだったら、あんたの実家にお願いをしなさいよ!!」
「こずえさん、アタシの実家は…兄が実権を握っているので、お願いをしたくてもお願いができないのです。」
「甘ったれたことを言わんといてくれるかしら!!それだったら、市役所に行って生活保護のシンセイをしなさいよ!!」
「こずえさん…うちはとても困っているのです…1円も収入が入らなくなった上に、友人はいないしアタシの実家とまさよしさんのお母さまの実家からカンドウをされているので、困っているのです。」
「だったら、市役所に行って生活保護のシンセイをしなさいよ!!」
「どうしても、市役所に行かないといけないのでしょうか…」
「そんなん当たり前でしょ!!」
「こずえさん、アタシはこずえさんのお給料の全額を送ってほしいとは言うていないのです…少しだけでもいいから送ってください…借家の家賃・2万円…1000円でもいいから送ってください。」
「だから市役所に行きなさいと言うてはるのよ!!生活保護の申請に行くことがこわいこわいと言うてはるから、生活がハタンしたのでしょ!!あんたね!!営業妨害をする上に店に居座る気でいるのだったらアタシの知人の組長に電話するから、覚悟しときなさいよストーカー女!!」
「こずえさん、アタシはこずえさんに送金してほしいとお願いをしているのよ…こんなにお願いをしているのに…1000円も送ることができないのですか!?」
「あんたは頭がパッパラパーだから、深刻な危機を乗り越えることがよぉできんクソタワケよねあんたね!!パート先の職場の待遇面が悪いと言うてやめてしまったと言うけど、あんたのことを必要としてくださった人の気持ちなんかどーでもいいのかしら!!ケーキ(景気)が上向きにならない中で、面接に受かったことに感謝しなさいよ!!」
「こずえさん…」
「ああ!!何なのよ一体あんたは!!もう怒ったわよ!!アタシ今から知人の組長に電話するけん!!あんたがアタシにストーカーをして、店に居座っていることを言いつけるから…そこ動くなよ!!」

アタシは、スマホを取り出して通話アプリを開いたあと、知人の組長に電話をして、まさよしの嫁さんがストーカーをしていたので、彼女の実家にヤクザの男10人以上を送ってほしいと電話した。

「もしもし組長!!アタシ…こずえよ!!まさよしの嫁がアタシにストーカーして、バイト先に居座ってカネたかろうとしていたわよ!!まさよしの嫁の実家にヤクザの男10人送って…チャカでまさよしの嫁のおにいたちを撃ち殺して、ほんで、ストーカー女つかまえたから、集団でマワして…コラーッ!!逃げるな!!」

まさよしの嫁さんは、ヤクザに殺されると思ってこわくなったので、足早に逃げだした。

何なのよ一体…

たかよしの家の家族は…

自力で危機を乗り越えて行く力がないみたいね…

アタシは、冷めた目つきで足早に逃げていったまさよしの嫁さんを見つめていた。
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