こっちじゃよくあることです。
よくある現実

私はコピー用紙に物理防御障壁の魔術印を描いていった。

「はい、魔術印に魔力を流し込んでみて。」

勇樹に描き上げた魔術印入りコピー用紙を渡した。勇樹は受け取ると指先に魔力を集中させている。うんうん、良い感じだ。

そして魔術印に指先を押し当てると勇樹の周りに物理防御障壁が張られる。

「うん、障壁もほつれもないし、力も一定…良い出来ね。」

勇樹は安堵したのか大きな息を吐いてから、テーブルの上に置いている麦茶をがぶ飲みしている。

「今ので基本の魔術印は終りね。でもこれは実際に目で診て魔術の発動と魔術印の発動を確認してもらう為の練習だからね。次からが本番だよ。」

勇樹は先ほど描いて渡した魔術印のコピー用紙をクリアファイルに仕舞っている。マメだな…。

本日は土曜日です。

宣言通り勇樹は退院してすぐに職場復帰をしていた。会社に行ったら下半身不随の病から治った『奇跡の男』と一躍時の人になったらしい。

何でも勇樹の手に触れたら病気が治る?という誤情報まで流れていて、頭髪の薄目の人から結構深刻な病の人まで押しかけて来てすごかったらしい。

「薄毛は厳密には病気じゃないしね~。」

「出来ませんとは、辛くて言えないよ~。」

「手ぐらい握らせてあげなよ。」

「そうする…。」

そんな話をしながら昼食の準備をする。

今週の初め

勇樹に押し切られるようにしてこのマンションに引っ越して来たものの、樫尾のご両親の夕食の準備は毎食作りに戻っている。

再びこの世界に留まっているので働きに出ようかと考えていたのだが、何故だか勇樹が猛反対をする。いやだからさ…私元カノだし?ここに住んでいるのもおかしいことだし?

おまけに今カノ、マホ姉さんの話題に触れようものなら魔力を放ってピリピリする始末。

この間からこれの繰り返しよ…。

前に会った満穂さんは、勇樹と別れた?ような口ぶりだったが…何せ非常事態だったのだ。体が元に戻ったんだ~関係も戻そう。そう思うものじゃないかな…。

< 36 / 43 >

この作品をシェア

pagetop