こっちじゃよくあることです。

勇樹は一瞬で、飛び退くと…頭を深く下げた。所謂(いわゆる)土下座だ。

「お願いします莉奈。俺を一緒に連れて行って下さい。」

……ん?今、何て言った?

勇樹は更に部屋の絨毯に額をこすりつけた。下に~下に~である。

「俺死んでも離れません。俺も連れて行って下さい。」

ヤンデレの名台詞?を連発しながら勇樹は更に言い募る。

「莉奈がこの世界からいなくなったら、俺死んじゃうよ…厳密に言うと体は何とか生きてても心が死んじゃうよ。でもどうしても帰るっていうなら…。俺、異世界まで追いかけるよ…。」

「ぎゃあ!」

完全にヤンデレ化している?!どうしたんだ?!結構ドライな性格だと思っていたけど?

「ヤンデレはやめろっ!どうしたのよ?ええ?」

勇樹は、土下座を止めて正座のまま少し俯いた。

「あの事故の後から…莉奈の秘密っていうか正体が分かって、俺の体が元に戻って魔力が使える様になって…毎日すごく楽しいんだ。莉奈に教わりながら魔術を使って覚えて、家には莉奈が待っててくれて嬉しくて幸せで…それが無くなるなんて絶対嫌だ。死んでも嫌だ。そんなことするならメテオを呼ぶ…。」

ぎゃああ?!メテオが何かは分からないけど、このユラユラと漂うヤンデレ臭から察するにとんでもない暗黒魔法的な何かだと察せられる。

私がそれでも返事に戸惑っていると、益々ヤンデレ臭の漂う魔力を発しながら

「〇メガウエポンも召喚する…。」

と、じっとりとした目で睨みながらヤンデレさんは呟いた。

「んぎゃあ?!」

あのとんでもなく巨大な爬虫類の目を思い出して怖気が走った。

背中を冷や汗が伝う。このヤンデレ魔術師が暗黒魔法を放出しまくったら…この世界が滅んじまう…。

私はニッコリ微笑みながら

「そうね、帰る時は一緒だね!取り敢えず当分はこっちの世界に居ようかな!」

ヤンデレ勇樹さんはパアッと笑顔になると両手を広げた。

いや、待てよ。何で胸に飛び込まなきゃならんのよ?

「ちょい待ってよ?私、勇樹とは今は幼馴染枠だけど、胸に飛び込む仲じゃないと思うけど?おまけにさっきマホチャンと会ったのよ?」

カチン…と勇樹の笑顔が固まった。

あ、あれ?



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