Ⓒランページ
電車を降りて、改札を通る。
男は立ち止まって、キミに「ホテルに近い出口はどっちかな?」と聞いた。キミはどうしていいかわからず、北口と南口を交互に見た。このまま時が止まってしまえばいいのに、そう思ったことだろう。しかし、現実世界では、そんな都合のいいことは起こらない。とされている。
「北口、かな」
「そっか。じゃあ、北口で降りよう」
キミは北口を選んだ。僕の家も北口にある。おそらくそんな理由で北口を選んだのだろうけど、残念ながら不正解。南口の方がホテルが多い。でもかと言って、北口にないわけじゃない。実際のところどっちに降りたっていい。ただ、確率論の話をするなら、キミは南口を選ぶべきだった。
北口の階段を降りて、ロータリーを抜け、どうしようか迷っていると、男が「あ」と声を出した。交差点の向かいにスーパーがあって、その隣にハンバーガーショップがあった。
「あそこはどうかな?」
「うん。いいと思う」
「じゃあ、決まり」
改札前で男と並んで信号待ちをする。キミは相変わらずそわそわと落ち着きがない。スーツケースを持った女性が、スーパーを正面に、左へ曲がった。キミはそこで気づく。左にはホテルがある。正解だ。読みもいい。ただ、まあいっか。