極甘クールな芸能人幼なじみの意地悪な溺愛

片桐さんには無視しなさいって言われた。やっぱりこういうのは反応しないのが一番なんだって。




表に立つのは事務所だし紗知はただの一般人なんだから安心してていいよって、お姉ちゃんはいつも通り笑顔だった。




蘭ちゃんや相馬君、麻凛ちゃんに至ってはアカウントをいっぱい作って消化活動をしてくれてるくらい。
みんな一生懸命で、だからこそ申し訳なくて。




だけどナツ君だけは誰とも違う反応だった。
あまり気に留めてないと言うか、さすがに何を考えてるのかよくわからなくなって思いきって聞いてみた。




「こういうのって、噂が出るだけでイメージダウンになるって聞いたことあるんだけど」



でもナツ君はいつも通りの笑顔を見せただけ。




「そんなんで潰れるなら青山一佳なんてその程度だったってことだよ。それにみんな俺らがここにいるって思ってんなら、別のとこでゆっくり会えるチャンスじゃない?」




あまりにも潔すぎる発言と前向きすぎる姿勢に唖然としてしまった。




「デートしよっか。どこ行きたい? 俺は高校生っぽいことしたい」




「それは、電車に乗って買い物とかカフェとかってこと?」




「そう。紗知が行きたいって言ってたマンガいっぱいのでっかい店とか画材屋にも行こ。バッティングセンターや釣り堀なんかも穴場かも」




楽しい未来を思い描いてる晴れやかな表情に、なぜかすごく癒された。



「ナツ君てほんとマイペースだね。そういうとこあの頃とあんまり変わってないかも」



さっきまで胸につかえてた重い息が安堵のため息に変わって、二人で話している間にいつの間に笑い声になった。
すごくほっとして、なんか嬉しくて。
だから思わず涙が出た。




「ごめん、不謹慎なこと言ったかも。あと自分の願望ばっかで紗知のしたいことなんも聞いてなかったわ……」




柄にもなく焦って狼狽えている顔を見たら、涙はもっと止まらなくなった。
いつもならすぐいたずらしてくるくせに、お利口に大人しくしてるのがなんだか不自然で、おかしくて。




「ううん、泣いたりしてごめん。嬉しくて感情が変になっただけなの。今すごくナツ君にぎゅーってしたいかも」




えへへと笑いながらぐしぐし涙を拭いてそう言ったら、隙間もないくらいに抱きしめられた。




「紗知を守れるなら俺なんでもする。ずっとそばにいるから、いつでもここに飛び込んできて」



広い胸のなか。ぎゅっとシャツを掴む。
ネットの騒ぎのことなんか、どうでもよくなるくらいあったかい。



「じゃあデート楽しみにしとくね」



「あー、でも熱出たらどうしよ」



「そういえばナツ君、遠足の前日に熱を出したことあったね」



「覚えてんだ? 恥ずい」



くすくす笑い合える二人だけのこの時間を守らなきゃって思ってたのに。


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