極甘クールな芸能人幼なじみの意地悪な溺愛
「あの」
声の方を見ると背の高い男の人が自販機の前に立ち尽くしていた。
顔回りを覆う黒いたっぷりめのフードジャケット。
バケットハットを目深に被ってて、マスクの上の目がこっちをじっと見てる。
「大丈夫?」
静かに呟かれて、自分がみっともない姿で自販機を抱きしめていたことに気がついた。
その自販機には清涼飲料水のCMポスターが嵌め込まれていて、青山一佳が炭酸ドリンクにも負けない爽やかな笑顔をこっちに向けてる。
もしかしたら、これにキスしようとしてるみたいに見えてドン引きされた?
最悪だ……今日って厄日なのかな。
とにかく慌てて手を引っ込めた。
私が邪魔で自販機が使えなかったんだ。鍵はこの人が行ったあとにしないと。消えてなくなるわけじゃないから少し落ち着こう。
「すみません、どうぞ使ってください」
場所を空けると、お金を入れた彼の指はコーヒーのボタンを押そうとして一瞬止まると、ふわり上の段に上がりココアを選んだ。
早く行ってくれないかな。
そわそわする。
時間が過ぎるほどに不安はどんどん募っていった。