私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
 見た目が本当にイケてるおじさんだけに、告げられたセリフとまったく一致しないせいで、リアクションに非常に困ってしまった。

「原尾さんはオヤジギャグのセンスないんだから、無理しちゃダメっすよ。ヒツジちゃん困ってるでしょ。ちなみに僕は高藤です。ここでは静かだけど、ベッドでは激しく感じさせてあげるからね♡」

(おーい。またなんか変なのが、湧いて出てきたよ。本当にここはゴミ箱だな……)

「原尾さんも高藤さんも、女のコの前でそういうのはセクハラ発言になりますよ。男所帯に花が咲いたんですから、これから気をつけないと。俺は松本、よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします……」

 やっとマトモな挨拶ができたことに、心底ほっとする。

「須藤課長、企画案10ページ目に突入しました。そろそろ準備してください」

 経営戦略部の中で一番大丈夫そうな松本さんが、須藤課長に声をかけた。

「そうか。会議の場所は、6階の第二会議室だったな?」

「はい。質疑応答もスムーズにおこなわれている状況です。インカムどうぞ!」

 書類を手に戸口に向かっていた須藤課長に、松本さんがつけていたインカムを手渡した。

「じゃあ行ってくる。成功を期待していてくれ!」

 わざわざ振り返って、嫌なしたり笑いを見せて出て行く須藤課長の背中を、ぼんやり見送っていると。

「俺の仕事は盗聴盗撮なんだ。ヒツジちゃんが社内で狙ってる男がいるなら、写真や音声付きで徹底的に調べてきてあげるよ?」

 一番まともだと思っていた松本さんの爆弾発言に、自分の顔が思いっきり引きつるのがわかった。

「すみません、そんな人いないので大丈夫です。えっと経営戦略部は須藤課長を入れて、5人の職員で構成しているんでしょうか?」

 ちょっとここでまとめよう!

 パワハラ系上司で仕事のできる須藤課長。
 経理部でヘタこいた優男の山田さん。
 イケおじなのに下ネタ全開の原尾さん。
 チャラそうな雰囲気で誘ってきた高藤さん。
 盗聴盗撮が専門の松本さん。

「実はあともうひとりいるんだ。彼はいつも重役出勤してやってくるから。そろそろ来ると思うんだけど」

 部署の壁時計に目を留めながら説明してくれた山田さんに、思わず安心感を抱いてしまった。他のメンツが個性ありすぎて、対処に困り果ててしまう。
< 5 / 114 >

この作品をシェア

pagetop