私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
「俺は経営戦略部の課長だ。どんな状況であれ、部下を守らなきゃいけない立場にある。記憶が混沌していようが、ケガをしていようが、大切な人をこの手で守り抜かなければならない」
万歳したまま両手を握りしめて、守り抜くと言いきった須藤課長を、この世で一番格好いいと思った。そんな彼の首に腕を回して、ちゅっとキスをする。
「ンンっ!」
「充明くん、大好き♡」
とどめに、頬にもちゅっとしてあげる。
「めめめ、愛衣さん、それ以上したら、俺は君にあんなコトやこんなコトをしてしまうかもしれないんですよ……」
「充明くんのしたいこと、全部してください」
「ぜんっ、ぶ~、あっそれなら……。もう遠慮はしません!」
須藤課長は万歳していた両腕で私の体を強く抱きしめるなり、ひょいと縦抱きのまま立ち上がる。適度に重さのある私を持ちあげているのに、ぐらつかずにサクサク歩き、隣の部屋に移動した。そこは大きなベッドのある寝室で、須藤課長は私を優しく横たわらせた。
「愛衣さんにお伝えしなければならないことが、ふたつほどあります」
そのままはじまると思ったのに、真剣な表情の須藤課長は、私に跨ったままぽつりと話しかけた。口調が暗かったので、あまりよくないことのように思える。
「なんですか?」
「愛衣さんを好きになったキッカケは、わんにゃん共和国と言いましたが、あれは偶然だったんです」
「偶然?」
何度か瞬きして須藤課長を見上げると、形のいい眉をちょっとだけへの字にして、気難しそうに説明する。
「経営戦略部の仕事で営業部に顔を出した際に、なにかの拍子で愛衣さんとすれ違ったんです。誰だろうと見た瞬間、好みのタイプだと思って……。それから事ある毎に、愛衣さんの周りをうろちょろしてました」
「全然気づきませんでした」
異動してはじめて須藤課長と逢ったと思っていただけに、意外な事実に開いた口が塞がらない。
「気づかれないように、さりげなくうろちょろしていたので、わからなかったのかと。でも俺のしてることは、ストーカーと変わりないので、愛衣さんに気持ち悪いと思われたら再起不能になると考えて、たまたま耳にした情報のわんにゃん共和国を持ち出したわけなんです」
まくしたてるように一気に喋った須藤課長は、今まで隠していたことを吐露して安心したのか、自分の胸に手を当てながら、大きなため息を吐いた。
「逆にビックリしました。充明くん、私の視界にまったく入っていないんですよね?」
須藤課長レベルのイケメンなら、印象に残らないほうがおかしい。
「入らないように逃げてました。それと愛衣さんに対する記憶がなくなったときなんですが、病室で目が合ったときに、『雛川さん』と認識する前に、好みのタイプだと思ってしまって、慌てて隠したんです。あのとき……」
「そんなふうに、全然見えませんでしたよ」
「だって怪我人のくせにナンパするなんて、非常識なことをしたら、絶対に嫌われると思って……」
「充明くん――」
「やっぱり俺は、愛衣さんしか好きになれないんだなって。好きすぎて、おかしくなりそうだ」
掠れた声が私の唇の上でしたのに、気がついたらそれが塞がれてしまって、呼吸のままならないキスに、体の芯が熱くなる。
万歳したまま両手を握りしめて、守り抜くと言いきった須藤課長を、この世で一番格好いいと思った。そんな彼の首に腕を回して、ちゅっとキスをする。
「ンンっ!」
「充明くん、大好き♡」
とどめに、頬にもちゅっとしてあげる。
「めめめ、愛衣さん、それ以上したら、俺は君にあんなコトやこんなコトをしてしまうかもしれないんですよ……」
「充明くんのしたいこと、全部してください」
「ぜんっ、ぶ~、あっそれなら……。もう遠慮はしません!」
須藤課長は万歳していた両腕で私の体を強く抱きしめるなり、ひょいと縦抱きのまま立ち上がる。適度に重さのある私を持ちあげているのに、ぐらつかずにサクサク歩き、隣の部屋に移動した。そこは大きなベッドのある寝室で、須藤課長は私を優しく横たわらせた。
「愛衣さんにお伝えしなければならないことが、ふたつほどあります」
そのままはじまると思ったのに、真剣な表情の須藤課長は、私に跨ったままぽつりと話しかけた。口調が暗かったので、あまりよくないことのように思える。
「なんですか?」
「愛衣さんを好きになったキッカケは、わんにゃん共和国と言いましたが、あれは偶然だったんです」
「偶然?」
何度か瞬きして須藤課長を見上げると、形のいい眉をちょっとだけへの字にして、気難しそうに説明する。
「経営戦略部の仕事で営業部に顔を出した際に、なにかの拍子で愛衣さんとすれ違ったんです。誰だろうと見た瞬間、好みのタイプだと思って……。それから事ある毎に、愛衣さんの周りをうろちょろしてました」
「全然気づきませんでした」
異動してはじめて須藤課長と逢ったと思っていただけに、意外な事実に開いた口が塞がらない。
「気づかれないように、さりげなくうろちょろしていたので、わからなかったのかと。でも俺のしてることは、ストーカーと変わりないので、愛衣さんに気持ち悪いと思われたら再起不能になると考えて、たまたま耳にした情報のわんにゃん共和国を持ち出したわけなんです」
まくしたてるように一気に喋った須藤課長は、今まで隠していたことを吐露して安心したのか、自分の胸に手を当てながら、大きなため息を吐いた。
「逆にビックリしました。充明くん、私の視界にまったく入っていないんですよね?」
須藤課長レベルのイケメンなら、印象に残らないほうがおかしい。
「入らないように逃げてました。それと愛衣さんに対する記憶がなくなったときなんですが、病室で目が合ったときに、『雛川さん』と認識する前に、好みのタイプだと思ってしまって、慌てて隠したんです。あのとき……」
「そんなふうに、全然見えませんでしたよ」
「だって怪我人のくせにナンパするなんて、非常識なことをしたら、絶対に嫌われると思って……」
「充明くん――」
「やっぱり俺は、愛衣さんしか好きになれないんだなって。好きすぎて、おかしくなりそうだ」
掠れた声が私の唇の上でしたのに、気がついたらそれが塞がれてしまって、呼吸のままならないキスに、体の芯が熱くなる。