【女の事件】続黒煙のレクイエム
第9話
T田さんが…いえ、T田が亡くなってから数日後のことであった。

T田が亡くなった事件の翌日、盛岡にある岩手県本部の本部長室にて行われる査問委員会にT田が呼び出されることになっていた。

T田は、岩手県本部に勤務をしていた時にめいこに対するセクハラを中心に、女性従業員さんたちに対するハラスメントを繰り返していたので、岩手県本部としてはT田を懲戒免職にするより他はないと言う結論が出ていた。

吉浜さんは、岩手県本部に勤務していた時にT田のかつての上司であったが、上に報告することを怠っていたので、査問委員会にかけられていた。

吉浜さんは、近いうちに岩手県本部からT田のハラスメントによる問題の全責任を取って出向命令が下ることがほぼ決まっていた。

吉浜さんは、40年間メッシホウコウでJFのために…日本の漁業の発展のために働いてきたが、ここへ来て自分の部下が犯したハラスメントによる問題で何もかもがパーになってしまったと思っていたので、頭を抱えて悩んでいた。

その一方で、T田を殺したきよひこは、吉浜さんからの皆勤賞を受けることはできないと思っていたので、吉浜さんに皆勤賞を受けることができないと伝えた。

吉浜さんは、きよひこからの伝言に対して、きよひこにこう言うた。

「皆勤賞を受けとることができん…それはどういうわけなんぞ!!」
「どういうことって…皆勤賞だなんてうそっぱちだから…ただそれだけです。」
「きよひこさん…私はね、きよひこさんが20年間組織のために文句ひとつも言わずに働いて来たのだから、皆勤賞を与えると言うているのだよ!!」
「あんたねなんだかんだ言うて、ちづるとオレが仲良くしていることがおもしろくないから腹を立てているだけだろ!!」
「立ててはいないよ…」
「立てているじゃないか!!」
「立てていないよ…きよひこさんとちづるさんのことは関係ないのだよ…」
「何でちづるにお見合いをすすめたのだ!?何でオレは釜石へ行かないかんのぞ!?なんとか言えよボケ!!」
「ちづるさんについては、本当に好きな恋人さんがいないからお見合いをすすめたのだよ…」
「ちづるは違う男性と結婚するから、釜石へ行けと命令しているだけじゃないか!!」
「釜石へ行くのは皆勤賞なんだよ…副賞として釜石でこずえさんとするために現地の公団住宅を提供しますと言っているのだよ…公営住宅の小さな部屋でもこずえさんと一緒に暮らすスイートホームだと思って暮らせ幸せになれるのだぞ。」
「こずえのことを出すなは!!こずえとは離婚した!!」
「きよひこさん…どうしてこずえさんと離婚をしたのかな…」
「こずえがオレのことを差別して、おにいの子供ばかりに愛情を注いでいた!!」
「こずえさんがきよひこさんを差別したって?」
「何なのだよあんたは!!ああ!!もう頭に来た!!オラ!!オレはあんたのことで相当イラついているのだよ!!」
「きよひこさん…」
「オレが大学3年の時…シューカツをしてもうまく行かなかったので、大学院に行って何か研究したいと思っていたのに、あんたがオレを止めたからやりたい研究ができなかったのだよ!!」

きよひこは、吉浜さんに今までの怒りを全部ぶちまげようと思っていたので吉浜さんに怒った口調で言うた。

吉浜さんは、ますます困った表情できよひこにこう言うた。

「きよひこさん…きよひこさんはJFの支所に就職をしたことが不満じゃなくて…大学院に行けなかったたことに不満があったから、JFで働くことに不満があったのか?」
「当たり前だ!!何でオレをJFに入れたのだ!?オレは今まで、オヤジの酒のためだけに働いてきたのかよ!!」
「きよひこさん、おとーさまはきよひこさんの人生をお酒のしくじりで台なしにしたことを今でも悔やんでいると言うているのだよ。」
「ふざけるなよ!!オヤジはオレががまんしてJFで働いているのをみて、遊んでいても酒がのめると思い上がっている!!」
「きよひこさん…」
「ふざけとんかコラ!!あんたがオレに天引き貯金と言うて、お給料から差し引いた3万円をオヤジのノミ代になっていたことについては今でも怒っているのだよ!!あんたは酒のみのオヤジをヨウゴしたのだから、いつか殺してやろうと思っとったんや!!」
「きよひこさん…」
「そう言うことで、釜石へ行く話は断るから…製鉄工場には『オレは無駄欠勤や遅刻や早退けを繰り返すので役に立たない…』と言うてください…公営住宅も『家賃払えない…』と言うてください。」
「分かった…きよひこさんがそう言うのだったら皆勤賞はなしにしておく!!…私の恩をあだで返すと言うことだね…ああ…なさけない…」

吉浜さんはきよひこにこう言うた後、プイと背中を向けて外に出ていった。

きよひこは、翌日から無駄欠勤と遅刻と早退けばかりを繰り返すようになっていたので、勤務態度が悪くなっていた。
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