あなたと・・

少しずつ、笑顔が出てくるように
なってきた蒼だが。

亮にも、他の男性は元より
女性に対しても
まだ、上手く接触できずにいた。

心療内科の先生も産婦人科の先生も
女性だが、
皮膚科と形成外科は、男性のため
俺が、ついていないと、
直ぐに意識を無くすか
過呼吸になる。

仕事は、調節しながら
蒼を優先して進めている。

俺は、背中を綺麗にしてもらいたい
と医師に話したが
蒼が、もう自分は年だから
皮膚に問題があるところだけ
お願いしますと言うから
数回の移植となる。

今日は、一回目の移植だ。
手術室に入るまで
俺は蒼についていた。
蒼は、不安そうにしていたが
師長と共に手術室に入り
麻酔をされると
そのまま寝てしまったと
師長から連絡を受けて
終る時間まで会社に顔をだす。

手術中になにかあれば
直ぐに連絡が入るように
なっている。

バタバタとやらないといけない
仕事だけを終わらせ
病院に向かった。

手術は、まだ終わっていなくて
手術室の前で待つ。

亮には、知らせてあるから
問題はない。
塁にも、朝きちんと話してある。
夕方は、亮が塁を病室に
連れて来てくれることに
なっている。

手術室から蒼が出てきた
うつ伏せで寝ている。

先生より
「無事に終わりました。
数日、部屋を無菌の状態にします。」
と、言われて
大丈夫かと心配だったが
「今の病室を使いますから大丈夫です。」
と、言われた。

蒼が目を覚ました時に
知らない状態で、
知らない人がいると、
どうなるかわからないから。
その辺りは、足立もわかってくれている。

蒼は、目を覚ましたり
眠ったりの繰り返しで
目を覚ます度に
俺の存在を確認する。

俺は、蒼の手を握り
「ここにいるから、心配するな。」
と、言い聞かす。

夕方、亮が塁を連れてきてくれた。

塁は、びっくりしていたが
蒼と話せた事で、ホッとしていた。

蒼のベッド回りは無菌状態だが
透明のカーテンだから
部屋の中では、
カーテン越しからも見える

面会時間までいて
塁を連れて亮と帰宅した。

蒼は、痛み止めと一緒に
睡眠薬も使用する。

俺達が、帰ってから
少しでも眠るように。
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