海の景色が変わる頃には…
久しぶりに見る由香は相変わらず美人。
生まれつき茶色くて、綺麗にウェーブした長い髪に白いきれいな肌。大きな瞳にスラリとした長い手足。

同じ中学2年とはとても思えない。

「ねぇ、もし凛が平気なら少し外で散歩しない?」

由香がチラっと窓の方を見て言った。

「えー!?暑いじゃん!!」

「暑いとか言う元気があるなら大丈夫だって!!ね?早く!」

由香はそう言って私の腕をグイっと引っ張った。

久しぶりに吸う外の空気は9月だというのにまだまだ夏の匂いがする。

コンビニでアイスを買って近所の公園のベンチに座った。後ろにある大きな木からは絶えずセミの鳴き声がする。

「ねぇ…やっぱ暑いね。セミ超鳴いてるし」

由香がそう言いながら眉間にシワをよせているのを見て思わず噴き出した。

「だから言ったじゃん!」

私が笑いながら言うと由香も「だねー!」と笑った。

由香と一緒にいると今までの心のモヤモヤが少し軽くなった。

凌に別れを告げた話を由香は優しく相槌を打ちながらしっかり聞いてくれた。

由香と別れた帰り、久しぶりにいつもの海まで行ってみた。
砂浜に出て、2ヶ月くらい前からある流木に座って海を眺めた。

砂浜には相変わらず誰もいなくて、海の音が永遠と繰り返される。明日は学校行こうかな…

海を見ていると何となくそう思えてきた。
学校に行って由香と一緒にいればきっと大丈夫。

「よし!帰ろう!」

自分を元気づけるために勢いよく立ち上がった。

海を背にして坂道を登っていくと、木のトンネルの奥から少しだけ見える国道を男の子が自転車に乗ってトンネルを見ながら通過して行った。
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