大好きな兄と私のふたり暮らし【優秀作品】
初恋
 20年前、私がまだ6歳小学1年生の時、母は結婚した。

 17歳で未婚のまま私を産んだ母は、23歳で36歳の父と結婚した。父には12歳中学1年生の息子がおり、私は生まれて初めて父と兄という2人の男性と同居することになった。

 父はとても優しく、兄はもっと優しかった。部活や宿題で忙しい中、私の宿題を見てくれて、つまらないおままごとにも付き合ってくれた。

 そんな兄も大学を卒業すると同時に家を出た。1人で自活すると言っていたが、母を避けていることは、16歳の私でも分かった。

 そして、兄が居なくなって、初めて気付いた。

 兄を恋しいと思っていることに。

 ずっと私には初恋が訪れないとばかり思ってた。

 違う。

 初恋はそこにあったんだ。

 私が気づかなかっただけで。


 それからさらに10年が経った。

 秋、父は56歳にして栄転となり、26歳の私を置いて母と共に赴任先へ向かった。しかし、26歳になってもまだ信用されないのか、私をここに一人暮らしさせることなく、父は兄を呼び戻した。兄は22歳から一人暮らしさせてもらってたのに。

 こうして、兄という名の初恋の人との2人暮らしが始まった。

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