大好きな兄と私のふたり暮らし【優秀作品】
クリスマスイブ
 それからひと月以上経ったが、幸い、その後白川さんからは何の連絡もなかった。

「お兄ちゃん、明日、何時頃帰る?」

12月23日の夜、夕食を食べる兄を頬杖をついて眺めながら尋ねた。

「んー、仕事の具合にもよるけど、明日も
 同じくらいかな。
 なんでだ?」

兄はハンバーグを頬張りながら答える。

「ねぇ、お兄ちゃんって、彼女いないの?」

私はずっと疑問に思ってたことを聞く。

「は?」

「だってさ、明日はクリスマスイブだよ?
 お兄ちゃん、休みの日はいつも
 家にいるし、仕事の電話しか掛かって
 こないし、かっこいいのに彼女いないの
 かなぁって思って」

私が妹じゃなかったらって、何百回思ったかしれないのに。

愛香(まなか)だって、彼氏いないじゃん。
 似たもの兄弟ってことかもな」

「ええ!?
 似てないよ〜」

私はお兄ちゃんみたいにルックスも頭も良くないし。

なんたって、連れ子同士。
そもそも血が繋がってないんだから。

「まぁ、弁護士になるまでは勉強漬け
 だったし、なったらなったで仕事漬け
 だし、俺なんかと付き合おうなんて、
 誰も思わないよ」


私ならそんなことないのに…


昔、家族みんなで一緒に住んでた頃は、自分の気持ちに気づいてなかった。

だから、純粋にお兄ちゃんを好きでいられた。

それが、離れてみて初めて、家族としてではなく、男性として好きだってことに気づいた。

でも、その時にはもうお兄ちゃんに会うこともなくなったから、ただ私の中で切ない思いが募るだけだった。

なのに……

また一緒に住むことになるなんて…


なんで私は妹なんだろう。

なんでお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだろう。

なんでお母さんはお父さんと結婚したんだろう。

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