【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい

 ――けれど。わたしは皇くんの胸元をそっと押し返した。
 あれほど強く抱きしめられていたのに、わたしが押し返すと、その腕はいとも簡単に緩んだ。

「ごめんなさい」

 やっぱりわたしには、この手を握ることはできない。

 すると皇くんは声を荒らげるわけでも突き放すわけでもなく、静かに一言聞いてきた。

「そんなにあいつがいいのか。こんな顔をさせるあいつが」

 わたしは目を伏せたまま頷いた。
 先生を好きでいたその先に自分が幸せになるゴールがなくても、そんなの関係ない。先生を好きでいる資格なんてないとも思ったけれど、きっと自分がしてしまったことから目をそらしてはいけないのだ。
< 128 / 160 >

この作品をシェア

pagetop