【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい
わたしと同い年くらいの高校生カップルだろうか。手を繋ぎ、体を密着させながらとても楽しそうに話している。
「綾木くん……」
ふと、ぽつりと、久しい響きが乾いた声で唇からこぼれた。
わたしは綾木くんと一緒にいて幸せだったけど、綾木くんにとってはきっと苦痛だった。そのことを気づかせないでいてくれたのは、きっと綾木くんの優しさだったのだ。
……それは、前をちゃんと見ていなかったせい。とぼとぼ歩いていたわたしは、アスファルトの出っ張りに躓いて派手に転んだ。足首が変な方に曲がり、膝が容赦なくアスファルトをこする。
「痛っ……」
痛いよ、綾木くん。
心の中でその存在に手を伸ばすみたいに名前を呼んだ、その時。
「ありゃー、だいぶ派手に転んじゃったね。大丈夫?」
突然背後から声が降ってきて振り返ると、そこには綾木くんではない男の人が立っていた。