猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
三実さんと結婚して間もなく半年が経つ。
私たちは夏に引っ越してきたマンションで新婚生活を続けている。

志信さんと信士くんは夏に千葉のご実家に越して行った。
志信さんは変わらずデパートのアパレルショップで働き、信士くんは以前と同じ私立小学校に通っている。
我が家のほうが近いので、たまに我が家で宿題を済ませ、迎えにきた志信さんと一緒に帰っていくこともある。
志信さんはご両親の愚痴や仕事の愚痴をこぼしては『信士のことをありがとう』と礼を言って去っていくので、だいぶ丸くなったように思う。

三実さんは志信さんと信士くんと家族ぐるみの付き合いを続けていることを少々不満に思っているみたいだけれど、基本的に私の意志を尊重してくれる。

仕事は相変わらず週三回。麻生さんご夫妻とのんびり勤務している。社長夫人ということはバレてしまったけれど、じろじろ見られたりすることはほとんどない。どんなことも時間が経てば慣れていく。そういうものだ。

休みの日は読書をしたり、手間のかかる料理にチャレンジしてみたり。鶏舎にも変わらず行っている。
植松さんは東京に来て初めての世間話の相手なので、私の方から懐いて顔を出しているのだ。
そして、三実さんと身も心も夫婦になり、私は毎日幸せな日々を送っている。三実さんの積年の想いは時に荒々しく、だけど深く優しく私を満たしてくれる。

毎日の愛の言葉もスキンシップも絶えることがなく、私が応えるたびに幸福そうに微笑む三実さんを見ると、夫婦になった喜びを心から感じる。
ベッドの中で抱き合いながら名前を呼ばれるのが好きだ。
どこにも行かない。逃げない。そう言っても、三実さんは愛おしそうに夢中になって私の名前を呼ぶのだ。
三実さんの唇から出る私の名前は響きが違って聞こえる。甘くとろけるお菓子みたいに身体の隅々までしみわたる。
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