極上パイロットが愛妻にご所望です
 翌日、早番で出勤した私の顔を見た住田くんから「体調が悪そうですよ? 休んだほうがいいです」と言われるくらい、私はひどい顔をしているようだ。

 昨晩、真鍋さんは待っていたかのようにワンコールで出た。私が出した答えに真鍋さんは満足げな声色で『それでいいんです。所詮、あなたが住めない世界ですから。このことは桜宮家には内密に』と私はとどめを刺された。

 結局、別れると告げた電話の後、一睡もできなくて、住田くんから心配されてしまうくらいの生気のない顔みたいだ。ずっと緊張が続いて、病気になってしまったのかと思うくらい今も鼓動がバクバクしている。

 決断の後も、悲壮な思いは変わらなかった。

 意思を告げたのだから、朝陽から離れなければならない。

 別れることによって、シモンズ家の施しは絶対に受けないと言ってある。

 AANを辞めて、朝陽のそばから去らなくてはならないけれど、引き換えにCAの職や手切れ金なんてもらいたくない。

 空港は毎日活気ある人々であふれている。

 今日も空港内ではこれから出国の笑みの絶えない旅行客や、出張が憂鬱なのか顔を顰めているビジネスマン、ここで働く職員などが行き交っている。

 私は活気あるこの空気が好き。自分が旅行へ行けるわけではないけれど、いるだけでワクワクしてしまうのだ。

 だから、ここを離れても、携われる仕事を見つけて必ず働く。

< 257 / 276 >

この作品をシェア

pagetop