極上パイロットが愛妻にご所望です
「ううっ……緊張する」

 本社ロビーの受付で名前を言って、桜宮専務に取り次いでもらう。まだ受付なのに、顔がこわばり引きつっている。

 寝不足だし、ひと晩中泣いたからひどい顔をしているが、頭をはっきりさせなければ。自宅で濃いコーヒーを飲んできたのに、役に立ってくれていない。心臓だけがさっきから早鐘を打っていた。

 無意識に頭を左右に振ると、目の前の受付嬢に小首を傾げて見られる。

 私は退勤後、一度自宅へ戻り、シンプルな形のグレーのワンピースに着替えていた。ワンピースには小花があしらわれており、上品で落ち着いた雰囲気に見えるようにそれを選んだ。

 夜会巻きにしていた髪はハーフアップにして、メイクはいつも通りに。

 髪型を仕事のままにして、できる女風にスーツを着てきたほうがよかった?

「水樹さま、二十五階へどうぞ。エレベーターは奥の右手になります。二十五階のフロアにて秘書が迎えに参ります」

 レモンイエローの制服を着た受付嬢に入館カードを手渡され、エレベーターホールへ歩を進める。

 
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