極上パイロットが愛妻にご所望です
 髪をアップハングにしており、意志の強そうな眉を見せている。その下にある黒い瞳は私を見ているけど、なにを考えているのかまったくわからない。

「朝陽の兄の、桜宮優成です」

「み、水樹砂羽です」

 緊張しすぎて気の利いた言葉なんて出てこなくて、名乗るのが精いっぱいだ。

「どうぞおかけください。水樹さん、コーヒーと紅茶、どちらに?」

「い、いいえ。お構いなく……」

 口の中はカラカラだけど、飲み物を出されても、喉を通っていきそうもない。

 そんな私の様子を悟ってか、桜宮専務は指示を待っている女性に水とコーヒーを頼んだ。

「今日君を呼んだのは、心から朝陽を愛しているか聞きたくてね」

 そんなのは愚問なのに……。でももう別れるのだ。

 シモンズ家は、私に圧力をかけたことを知られたくなさそうだった。真鍋さんは内密にと言っていたから、言葉を選ばなくては。話さない義理はないけれど。

「心から……愛しているのなら、別れなさいと言うことでしょうか……? それならもちろんです。彼の足枷にはなりたくありません」

 一瞬、桜宮専務は瞳を大きくさせたのち、身体をゆったりとソファの背もたれに満足そうに預けた。

 そこへ私が背を向けているドアがノックされ、カチャッと開く音が聞こえた。先ほどの女性が戻ってきたのだろう。

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