極上パイロットが愛妻にご所望です
「では、愛のために朝陽と別れても構わないと言うんですね?」

 確認の言葉を頭の中で反復すると、胸が苦しくなって返事ができずにコクンと頷く。

「ったく、兄貴! 意地の悪い質問するなよ」

 その声に私はハッとなり、咄嗟に立ち上がって振り返る。

 朝陽だった。制帽はかぶっていないけれど、機長の制服のままでドアの前に立っている。

「朝陽……」

 彼は口元を緩ませ、私のほうへ近づいてくる。

「兄貴、それは俺が頼んだことと真逆のことだろ。見ろよ。砂羽が怯(おび)えている」

 怯えるというのは語弊があるけれど、確かに朝陽の足枷にはなりたくないと口にしたときは苦しかった。

 今でも手が震えている。その手を朝陽はギュッと握って私をソファに座らせ、自分も隣に下ろす。

「砂羽、大丈夫か? すまない。兄貴が悪ふざけしたんだ」

「悪……ふざけ……?」

 なんのことがさっぱりわからなくて、不安な瞳を朝陽に向けていると、桜宮専務が「クッ」と喉の奥で笑った。

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