極上パイロットが愛妻にご所望です
 十分後、自宅の玄関でパンプスを脱いで、そのままベッドに腰かけ、久美に返事を打つ。

 彼女のメッセージは、新居へ遊びに来ないかとのお誘いだった。

 多忙な城田機長の都合で、新婚旅行は海外へ行かず、二泊三日の温泉でのんびり過ごしたようだ。

 国内よりも海外で過ごすほうが多いふたりには、温泉でまったりするのがいいのかもしれない。
 久美の都合をメッセージアプリで尋ね、木曜日の休日に新居へ遊びに行くことになった。

 品川のタワーマンションの新居を訪れるついでに、途中にある一条総合病院で受診しよう。
 
 腱鞘炎は痛みが緩和され、だいぶよくなっている。もう湿布もしていないし、あとはテーピングをして、負担をかけなければ大丈夫そうだけど、桜宮さんの紹介の病院ということもあって、約束通り診療に行かなければと思っている。
 

 木曜日の十時過ぎ、自宅を出て一条総合病院へ向かった。電車で五つ目の駅だ。昨日梅雨入りした今日はシトシト細かい雨が地面を打っている。

 私は撥水加工のクリーム色のコートを羽織り、足元もパンプスにしか見えないレインシューズを履いている。

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