屍病
「わからないのは私も同じだよ。勉強なんてつまらないし、いじめられてたし。でも、ここでイーターを怖がるより全然マシだったな……戻りたいよ、元の世界に」


私がそう言うと、真倫ちゃんは小さく頷いて。


そっと私の手を握ってくれた。


「絶対に戻ろうね。戻ったら、今まで出来なかったことをいっぱいしよう。私、愛莉が……その……す、好きだからさ」


少し照れたように、小さくボソボソと呟く真倫ちゃん。


いつもは男勝りで明るいから、こんな照れたような表情をするなんて。


女の子らしい、可愛い一面を見られたと思ったら、思わず笑ってしまった。


「そ、そんなにおかしいこと言った?」


「んーん。私も大好きだよ、真倫ちゃん。ずっと、真倫ちゃんは私の味方でいてくれたんだよね」


そう言うと、真倫ちゃんはまた照れたように。


ギュッと手を握って。


「ほ、ほら。もう寝るよ。眠れる時に眠らなきゃ」


「うん。おやすみ。起きたら……元の世界に戻っていますように」


期待は出来ないけれど、私は心からそう願って目を閉じた。


これがただの夢なら、どれだけ救われるか。


真倫ちゃんの手を握り返して、明日も生きていられるように祈るしかなかった。
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