屍病
何がどうなっているかなんて、誰にも説明出来ない。


ただわかっているのは、この道が、さっき向かったとは逆方向にある隣町から、中浜町に入った時に通る道だということだった。


「え、えっと……町の東側から出たのに、私達は町の西側から戻って来てしまった。つまり、中浜町からは出られないってことなの?」


混乱する頭で必死に考えようとする未来さん。


私もその意見と同じ……というか、それしか考えられない。


「一体どうなってるんだ。引き返してみるべきか」


車を停め、ハンドルにドンッと拳を打ち付けた春瑠さん。


「そ、そりゃあ隣町から車がやって来ないはずだぜ……町から出られねぇじゃねぇか! ぬか喜びってやつかよぉ……俺達はどうなるんだこれ」


そんなの、訊かれてもわかるはずがないじゃない。


私達が見ているものは、誰も知らないことで、答えを持っているわけじゃないのだから。


「わ、私は……引き返しても意味がないと思う。考えなければならないのは、どうやって生き抜くかってことだと思うよ」


「意味が……ない? もしかするとこちらからなら出られるかもしれないじゃないか。その可能性を否定するのか!?」


不安になる私達の前で、春瑠さんと未来さんが口論を始めた。


だけど、誰もそれを止められるほど、心に余裕がなかったのだ。
< 203 / 238 >

この作品をシェア

pagetop